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航空機は渦で飛ぶ

見たこと、思ったこと、気になったこと。

空気の摩擦と渦

航空機は渦で飛ぶ 第3弾

境界層の話。

航空機がなぜ飛べるのかというと、翼の周りに循環を発生させて揚力を得ているからというのが最終的な結論になる。(このあたりのの説明は、こちら。)
この循環の元となっているのが、空気と翼の触れている部分で発生している小さな渦である。今回は、この小さな渦について見ていく。

まずは、境界層。

机の上に置いたティッシュ箱を指で押して移動させたとする。
このとき、ティッシュ箱には地球の重力と、指で押されている力、机の垂直抗力、それから、机との摩擦力が働いている。
同様に、翼とそれに沿って流れる空気との間にも摩擦力が働く。

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矢印は空気の流れを表している。流速の早い場所ほど長い矢印だ。
流速の矢印の先端を結んだ曲線を見てもらうと、物体から離れるにつれ、流速が上がっているのがわかる。(これより上は一定になる。)
このように、流体の流れの中で、流速に差がある領域境界層と呼ぶ。
これが揚力を発生させる循環を作り出す渦を発生させる。
つまりは、↓こういうこと。

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渦度と書かれているが、これが渦のこと。
渦、と言われるとかき回したコーヒーとか、グルグルした何かを思い浮かべるかもしれないが、流体力学では、そのグルグル自体ではなく、流れの中に置いたものが回転する場合、そこには渦がある、と表現する。状態の説明だ。
境界層の中に小さいものを置いてみたのが上の図。
丸だと分かりにくいので四角。回転しそうなのがイメージしてもらえるだろうか?
このように、境界層の中の流速差によって流体と静止した物体の接触面には渦が生じる。
これが、飛行機の翼の場合は、上下のパランスをとるために出発渦を生み、その対の渦としての循環が生まれる。

結局、空気の摩擦が、揚力を生み出す大元になっている。
摩擦抵抗は、機体にとっては抗力(機体の進行方向の逆に働く力。これがあると飛行効率が落ちる。⇔推力)になってしまうのでないほうが良いのだが、空気の摩擦がなければ揚力が得られず、飛ぶことができない。
実際に、航空機に働く力は、推力を上げると、揚力が多く得られ、抗力も大きくなるという図式になっている。
推力と揚力は欲しいが、抗力は、いらない。ジレンマである。


余談になるが、境界層は航空機が専売特許を持っているわけではない。

身近なところなら、電車。
ホームに入ってくる電車も境界層を発生させている。
ということは、循環を纏ってもいる。
境界層自体はごくごく狭い領域なのだが、境界層が発生させる渦はそうではない。
上の画像で渦の回転方向を見てもらうと、物体に向かっていっているのがわかると思う。
電車のホームに引いてある黄色い線は、境界層の渦に巻き込まれて、その気もないのに電車に体当たりする人が出ないようにあるのだ。
「大げさにこんな線引かなくたって、あたりゃしないよ、大人なんだから。」
なんて思って黄色い線を無視していると、巻き込まれる可能性がある。
電車に乗っていて、走行中に他の電車とすれ違う時、そこそこ大きな音と、横揺れを感じたことがあると思う。境界層同士がぶつかりあって、ああなる。
線路の上にある電車があの調子なのだから、ふらふらホームを歩いている人間を転ばせることくらいは造作もない。
電車の速度が上がるほど境界層も、そこから発生する渦も、強力になる。
新幹線や快速等、ホームに近い線路を通過する高速のものには特に注意が必要だ。
車も同様。

流体、というと水も含まれるので、船舶でも同じようなことが起きる。
大きさの差が大きい船舶同士が並走すると、小さいほうが大きいほうに引っ張られて接触してしまう。
漁船は、自衛隊護衛艦と一定以上の距離を取らないと危ないということだ。
船舶関係には明るくないが、きっとこのあたりは法律で定められているのではないかと想像する。正面衝突を避けるときは左に舵を切る決まりになっているのは有名だが、そんな感じで。
動いている船舶から飛び降りるのもやめたほうがいい。
境界層の発生させる流れによって船体の下に流れ込んだ水が向かうのは、動力のスクリューだ。
誤って人が海に落下した場合、エンジンを停止して左に舵を切る決まりがあるが、回転体は急に止まってはくれないので(無理に止めると衝撃でバキッといってしまうのでそれはそれで危険。)あとは運かな。
スクリューより後ろで落ちても、船の後流で海底に引き込まれてしまう恐れもあるので、これも運かな。
落ちないようにしてください。特に動いている大きな船舶からは。