航空機は渦で飛ぶ

見たこと、思ったこと、気になったこと。

US-2

海上自衛隊飛行艇。US-2.  

 

大分前に、キャスター(ジャーナリスト?)と盲目の二人の男性が、
ヨットで太平洋を横断しようとして遭難してしまうということがあった。
クジラにぶつかられたらしい。
この時、救助に向かって話題になった機体がU-2という飛行艇
この事故の特集みたいな番組を眺めていたら、U-2の修飾語として

最新

という言葉が使われていた。
さすがテレビ、と思ってしまった。
嘘ではない。確かに一番新しい。US-2の後、飛行艇作ってないから。
間違ってはないけど、ニュアンスとしていかがなものかと思う。

最新というと、ここ2,3年で作られたような印象を受けるが、
US-2は10年ほど前の機体だ。
US-1を改修したものなので、構造設計はUS-1から2,30年前のものになるハズ。
既存の機体を改修して新しい飛行機を作る場合、元の機体をよく理解している人に意見を求める必要がある。US-2はUS-1から長い時間が経っていたため、すでに退職していたUS-1の技術者を拝み倒して協力を仰ぎ、作ったと聞いた。

とはいえ、自衛隊機なんてそう頻繁に新機種を作るものではないし、
とてもいい飛行機なのは確か。そして、珍しい。
何が珍しいかというと、今日日、飛行艇というのも少ないけれど、
US-2はSTOL機と呼ばれる種類の飛行機なのだ。
SLOW TAKE OFF/LANDING.  低速離着陸機である。
欲しがっている国もあるらしいが、兵器に分類されるので輸出していない。
海上自衛隊だけが運用している。


似たような名前でVTOL機というのもあるが、
こちらはVERTICAL TAKE OFF/LANDING.  垂直離着陸機。ハリヤーとオスプレイだ。

US-2は救助活動のための飛行艇なので、低速で飛行ができるのは優れた特徴なのだが、
この低速というのが飛行機にとっては曲者で、低速で安定して飛ぶことだけでも難しいが、低速になるとバックサイド現象というものが起こる。

飛行中の航空機には、様々な抵抗が発生している。
機体の形によるもの、推力とセットで生まれるもの、等々。
その中に、有害抵抗と誘導抵抗というものがある。
どちらも飛行機が動くことで生まれるが、有害抵抗は速度が上がるにつれ増えるのに対して、誘導抵抗は極端な低速で大きくなる。
誘導抗力が小さくなっていくと、入れ替わるように有害抗力が大きくなり、前期抵抗はを縦軸、速度を横軸にとるとJを右に45度ほど回転させたような形のグラフが書ける。
(画像を載せろよってね。めんどくさいんです。すみません。)
誘導抵抗>有害抵抗の領域をバックサイド、
誘導抵抗<有害抵抗の領域をフロントサイドと呼ぶ。
普通はバックサイドの領域まで減速できず、フロントサイドの速度で着陸するので問題にならない。
しかし、US-2の着陸速度はバックサイドに入ってしまう。
抵抗の種類が入れ替わるのはいいのだが、問題はバックサイドではエレベータの効きが逆になるということだ。
つまり、バックサイドで操縦桿を押すと機体が浮き上がり、そこで高度を取ろうと慌てて操縦桿を引くと逆に降下してしまう。

飛行機は、操縦桿を押すことで頭が下がり、抵抗も下がるので加速する。
この時、フロントサイドでは、有害抵抗が速度に比例して増加するので水平維持パワーが不足して降下する。
しかしバックサイドでは、加速すると誘導抵抗が減少して水平維持パワーが余剰になるので浮き上がる。

このバックサイド現象、US-2の前身ではUS-1では発見されていなかった。
US-2は、エレベータと推力制御を組み合わせた制御装置を持っているので
普通に操縦すればOKだが、US-1はパイロットの勘で着水させていたらしい。
どこから突っ込んだらいいのかわからない。
とりあえず、

パイロットかっこいいな!!